世界最古の冒険叙事詩、『オデュッセイア』。知恵の英雄の奇想天外な放浪の旅路は、なぜひとびとを惹きつけるのか?その奥深い魅力と謎、張り巡らされた仕掛けを読み解く、入門書の決定版。 [目次] はじめに──長い帰還の物語 ・第一章 オデュッセウスという英雄 盲目の吟遊詩人、ホメロス/ 武力ではなく知恵の英雄/ 語り継がれるトロイ戦争伝承/ゼウスの双子たち/ 争いを招く女神の贈り物/ ギリシア最大の英雄、アキレウスの死/戦争終結と長い凱旋の始まり/ 普遍的な家族の神話/ 妻ペネロペイアと息子テレマコス/ 対比されるさまざまな「家族」 ・第二章 受難の旅と復讐の物語 二四巻の物語/ 旅の始まりと甘美な島/ キュクロプスとの決闘と海神の呪い/ 風の島、人食い巨人の島/ 魔女キルケと冥界下り/ 異形と神による相次ぐ受難/ ニンフの島への漂着/ ついに故郷へ帰還/ イタケ島での父と子の再会/ 求婚者たちを一掃、妻との再会/ ホメロスの超絶技巧 ・第三章 二四書の複雑な語り 二四の書、四一日間の出来事/ 第一書/ 第二書/ 第三書/ 第四書/ 第五書/ 三者の時間の流れ/ 第六書/ 第七書/ 第八書/ 第九書/ 第一〇書/ 第一一書/ 第一二書/ 前半と後半の折り返し/ 第一三書/ 第一四書/ 第一五書/ 第一六書/ 第一七書/ 第一八書/ 第一九書/ 第二〇書/ 第二一書/ 第二二書/ 第二三書/ 第二四書 ・第四章 構成の巧みな仕掛け 構造の妙の四要素/ 1.円環と反復││折り返し構造/『イリアス』の折り返し構造/安定と変化の技法/ 2.時間と空間の同時多元進行/ 嘘による異次元効果/ 3.四書ごとのかたまり/ 4.各書内部での折り返し構造/ さまざまな物語手法の元祖 ・第五章 物語としての魅力 主題の魅力/ ネガとポジ──愛人と求婚者たち/ トロイ側の家族/ 帰還後の物語──家族崩壊の危機/『テレゴノス物語』/ 英雄叙事詩にとっての家族/ 危険な冒険の魅力/英雄と武器/ 嘘と変装と大逆転劇/ 歴史を越える物語 ・第六章 ギリシアとインドに共通する叙事 『マハーバーラタ』と『ラーマーヤナ』の関係/ 共通する話素/『オデュッセイア』と『ナラ王物語』/ 海と陸地に分かれた物語 ・第七章 世界各地への伝播 世界各地への伝播と影響/『アラビアン・ナイト(千一夜物語)』/ 「サイフ・アルムルークとバディーア・アルジャマールの物語」/ 日本への影響──『百合若大臣』/ 『御曹司島渡』/ 中央アジア英雄叙事詩への影響──『デデ・コルクトの書』/「アルパミシュ」/ どのように日本まで伝わったのか ・第八章 近代以降に見る系譜 近代以降の西洋文学への影響/ デフォー『ロビンソン・クルーソー』/「イムラヴァ」/スウィフト『ガリヴァー旅行記』/ ジョイス『ユリシーズ』/ 近代西洋における『オデュッセイア』の変容/ アーサー・C・クラーク原作+スタンリー・キューブリック監督『2001年宇宙の旅』/ ヴィットリオ・デ・シーカ監督『ひまわり』/ 世界中にインスピレーションを与える ・補章 現代日本の『オデュッセイア』的物語 沖田瑞穂 1.『オデュッセイア』と『ダンまち』/ 『ダンまち』とは/『ダンまち』のヘスティアと神話のアテナ/ オデュッセウスとベルの「旅」と誘惑/ 終着と自己の確立/ 2.『オデュッセイア』と『十二国記』/ 陽子とオデュッセウスの旅/ 家族への想い/「王位」の回復と獲得/ 3.『無職転生──異世界行ったら本気だす』における家族離散と旅/ 新しい帰属の形を探して おわりに──世界文学としての『オデュッセイア』 あとがき 沖田瑞穂 参考文献
#物語 の新書一覧
このテーマに関連するタグ
人は一度かかった疫病(えきびょう)には二度とかからない。二度目の「疫」病から「免」れる不思議な仕組み「免疫」は今も謎に包まれ、未知の領域が開拓され続けている。ノーベル賞級の成果を輩出する免疫学の世界的権威と、難解な科学を明快に解説する科学ジャーナリストがタッグを組み、知的興奮に満ちた免疫世界の物語を紡ぐ人気シリーズの第4弾! 【カリコのmRNA革命】恐るべきウイルスが世界を変えたあの時、それでも人類は幸運だった。RNAをこよなく愛するカタリン・カリコが同時代に居合わせたからだ。彼女の研究が結実して人類は、新型コロナを制するmRNAワクチンをいちはやく獲得できた。しかし、その道のりは苦闘の連続だった。日本人研究者の知られざる貢献も得て、彼女がノーベル賞に輝くまでの歩み。 【免疫の暴走を封じたアクテムラ】新型コロナ感染症が重くなると、免疫の情報伝達分子サイトカインが嵐のように過剰放出され、激しい炎症反応が生じる。それは呼吸不全や血栓形成、多臓器不全につながり、患者の命を脅かす。この重篤な炎症反応を抑えるため世界の臨床現場で重要な役割を果たしたのが本書著者の一人、岸本忠三のインターロイキンー6発見から生まれた「アクテムラ」だった。関節リウマチの薬はいかにして新型コロナ重症患者を救ったのか。 【がんと戦う「小さなサイボーグ」CARーT細胞】強力な殺傷能力を備えたT細胞に、敵を探知する高性能センサーを合体させたCAR-T細胞。急性リンパ性白血病や悪性リンパ腫、多発性骨髄腫など血液がんで大きな成果をあげたこの治療は今、「宿敵」固形がん(肺がん、乳がん、胃がん、大腸がんなど)に挑もうとしている。血液がんとは違い臓器の奥に巣をつくる固形がんは免疫細胞を寄せつけにくい。そこにどう入り込み、攻撃するか。CAR-T細胞の次の進化はその難問に向かっている。 【目くるめく迷宮「腸管免疫」の驚異】全身の免疫細胞の約7割が集う腸は「体内最大の免疫の場」だ。そして腸には、天文学的な数の腸内細菌が棲んでいる。両者が至近距離で向かい合う腸は一触即発の緊張の場。しかし戦いが始まり、炎症が起き、激しい腹痛に見舞われることはめったにない。それはいったいなぜだろうか? 鍵を握る「免疫寛容」のからくりをはじめ、人知がおよばない迷宮「腸管」で繰り広げられる免疫世界の不思議さに迫る! (目次) 第一章 自然免疫の砦に挑んだカリコ mRNA革命の軌跡/第二章 サイトカインの嵐を封じたアクテムラ IL-6研究が導いた新しい治療/第三章がんと戦うCAR-T細胞 進化する「小さなサイボーグ」/第四章 がん個別化治療に向かうmRNA 「わたしだけのワクチン」はつくれるか/第五章 不思議の迷宮、腸管免疫 体内最大の免疫の場で何が起きているのか
紀元前2600年のインダス文明を起源とするインド。社会、文化の礎が築かれたのはヴェーダ時代からグプタ朝の間だった。中世にはイスラーム勢力が入り、多数の王朝が乱立し分裂する。16世紀から300年にわたり支配したのはムガル帝国だった。イギリス統治期を経て、ついに1947年に独立。20世紀末からの成長は目覚ましく、世界に存在感を示す。本書は「21世紀の超大国」の、5000年に及ぶ長く複雑な軌跡を描く。 ■目 次■ まえがき 序 章 長い歴史と複雑な社会 第1章 インダス文明から始まるインド史 1 ハラッパー、モヘンジョ・ダロ遺跡の発見 2 未解明のインダス文明 3 インダス文明の衰退 第2章 古代文明の展開 1 ヴェーダ時代 2 仏教・ジャイナ教の成立と発展 3 古代統一王朝の成立 4 クシャーナ朝と南インドの諸王朝 5 グプタ朝ーヒンドゥー教と古典文化の隆盛 コラム アレクサンドロス東征がマウリヤ朝を生み出したのか コラム 文化遺産のアジャンターとエローラ 第3章 中世インド世界 イスラームとの遭遇 1 イスラーム勢力の進出 2 南インドの攻防 バフマニー朝対ヴィジャヤナガル王国 コラム 世界遺産クトゥブ・ミナール 第4章 ムガル帝国の成立と展開 1 初代バーブル帝 ムガル帝国の始祖 2 第三代アクバル帝 実質的な帝国建設者 3 ムガル朝の全盛から衰退へ 4 反ムガル・在地勢力の台頭 5 ムガル帝国の遺産 第5章 英国のインド支配 インドの近代 1 インド航路の開拓と欧州列強のインド進出 2 英国による植民地化と在地勢力の征服 3 一八五七年反乱 4 英領インドの誕生 第6章 独立運動の展開 1 社会改革から始まった独立運動 2 インド国民会議派の誕生 3 第一次世界大戦期以降の独立運動とガンディーの登場 4 可視範囲に入り始めた独立 5 大英帝国の落日と第二次世界大戦 6 第二次世界大戦終結から英国の撤退へ 第7章 独立インド 理念から現実へ 1 憲法の制定 世界で最長の憲法 2 ネルー時代 独立〜一九六四年 3 インディラ・ガンディーの時代 一九六〇年代中頃〜八〇年代 4 一九八〇年代 激動の一〇年 5 九〇年代の枠組み変更 コラム ガンディーの現代史的意味 第8章 日本とインド 1 憧れの国インド 2 明治時代から第二次世界大戦まで 3 第二次世界大戦後の日印関係 両国間のズレと低迷した関係 4 九〇年代に始まった日印パートナー関係 5 これからの日印関係 コラム インパール作戦 終 章 21世紀のインド 1 インドの政治経済状況 2 国際社会におけるインド あとがき 主要参考文献 関連年表
■事故物件を読み解くと…… 古典文学には、住む者に災いをもたらす「凶宅(きょうたく)」がけっこう登場する。『源氏物語』は今で言う事故物件が舞台になっているし、『今昔物語集』『栄花物語』にも、不吉な家や場所が出てくる。また、平賀源内のように、事故物件に関わってしまった歴史上の人物もいる。著者は長年、それらをファイリングしてきたが、奇妙なことに気づく。事故物件で不幸に遭う人がいる一方、大きく運が開ける人もいるのだ。はたして、その違いはどこにあるのか。古代から現代までの事例を紹介しながら、事故物件に秘められた未来へのメッセージを読み解く。一番怖いのは……。 (以下、目次) 第一章 なぜ『源氏物語』の舞台は事故物件ばかりなのか 第二章 そもそも凶宅とは 第三章 凶宅に振り回された人たち 第四章 凶宅で無事に過ごした学者の極意 第五章 家に怪異をもたらす人間とは 第六章 野中の一軒家で恐怖するのは誰か 第七章 人を破滅させる凶宅、福をもたらす凶宅 第八章 平賀源内と凶宅 第九章 連鎖する事故物件……曰く付きの土地という存在 第十章 橋と事故物件 第十一章 事故物件だらけの神社仏閣 第十二章 更地と皿屋敷 第十三章 なぜ凶宅はできるのか? 第十四章 地名に残る事故物件 第十五章 長岡京は事故物件!?……平安京遷都の謎 第十六章 残しておきたい事故物件……未来へのメッセージ
電子書籍なんてまっぴらだ! 「電子書籍は一切見ません」「電子は読んだ気がしない」「本は借りずに買って読みます」と公言されている林先生に、本との付き合い方・読書の醍醐味について徹底的に語っていただく。 70年に及ぶご自身の読書遍歴についても言及。本書に登場する書名と著者名の一部を書き出すと、 万葉集、源氏物語、伊勢物語、大和物語、今昔物語集、徒然草、宇治拾遺物語、平家物語、日本名山図会、世阿弥、兼好法師、田中冬二、川本三郎、長井荷風、西脇順三郎、佐藤春夫、夏目漱石、森鴎外、丸谷才一、池波正太郎、江戸川乱歩、藤沢周平、大藪春彦…… 以下は本書からの引用。 ●紙の本のよさとは やっぱ本は紙だねぬくぬく冬の床 これは、私の最新句集『ひとりみち』の中にある一句です。この句は、たとえば文庫本だとかを持って、布団の中にぬくぬくと包まれている様子を詠んだもの。本を読むともなく寝るともなく、だらだらとしている。 そうしたことを考えるだけで、なんだか気持ちよさそうじゃないですか。でも、これは電子本だったらありえないことです。 スマホでは目が痛くなるし、タブレットでは重くて嫌になってしまいます。やはり本というのは、その形、存在の有りさまが何千年という歴史をかけて自己完結してきている世界なので、それをたかだか数十年の電子ものが凌駕することは想像すらできません。 なんといっても、「紙の本というのは安定である」と思うわけです。電子ものと違って、紙の本は壊れません。多少手荒に扱っても大丈夫だし、電源が必要ないから随時、何十時間でも読んでいられるんです。 そして、スマホなんていうちんちくりんなものと違い、紙の本には手触りに大変に愛すべきものがある。 スマホは手に持って縦にすれば変に縦長だし、横にすれば足りないし、なんとも落ち着きの悪い形。こういうメディアで読むということは、一つがほんの10分で読める程度の文章を見るならいいけれど、継続的なもの読むには本質的に適していないのです。 これは何も本ばかりではなく、画像データにしてもTikTokのようにスマホに特化したものはだいたい1つが1分くらい。要するに、見る側はそれだけの忍耐力しか持てないわけです。3、4分になったら、もう途中で「いいや」となってしまう。 そうしたことが、人間の意識に非常に悪い影響を及ぼすことになるのではないか。なんでも短くて、ちょろちょろっと簡単にまとまるようなこと、つまり軽薄なことしかここには盛り込むことができないのです。 ●紙ならではの利便性 端的に言えば、『源氏物語』のように1つの文章が何ページにもわたるような、非常に息の長いものを電子本で読むとします。すると、「あれ?これはどこからだった?」といってページを指でスワイプしているうちに、どこを読んでいるのかわからなくなってしまうこともある。 それが紙であれば、付箋を貼っておくなり、自分の本であればちょっとマークしておくこともできます。これに使うのが、昔で言うところの不審紙(ふしんがみ)です。赤や青い色で染めた和紙を繊維に沿って破いて5ミリ角くらいの破片を作って舌にのせ、これはという箇所にピュッと貼り付ける。 そうすると、唾液の粘着力でポストイットのように紙に引っ付きますが、粘着はしてないので乾いてしまえば剥がれるし、爪などで擦らない限りは紙と紙で付いたまま。そういうふうにして、何ページかにわたるものにちょっとマークしておきたいときに紙同士を唾液で引っ付ける、これは日本人の知恵です。 それから、本で言えばこよりだとかを栞(しおり)代わりに挟んでおくこともあります。昔の本を見ていると、よく木の葉が差し挟んである。椛(もみじ)やきれいな落ち葉を拾ってきて、栞代わりにピュッと挟んでおく。実に風雅ではありませんか。 そうしたものは読み終われば退けるにせよ、さまざまな利便性ーー読書という営為の中で紙の本しか持ち得ない非常に便利な属性ーーがある。それを知ってしまうと、タブレットやスマホに栞は貼れないし、椛を乗せてもしょうがないと思ってしまうのです。 電子本に栞のようなマークを付けることをしても、どこに付けたか探すのがまた大変です。けれども、紙であればパラパラとめくるだけで、「あ、ここだ」とすぐにわかる。だから、読書というものをきちんと経験した人、読書の楽しさを知っている人たちにとっては、電子本はもうフラストレーションでしかない。「ああ、紙ならこんな面倒くさいことしなくて済むのにな」と、常に思います。だから、やはり私が読むのは紙の本です。電子本は買いません。
ヨーロッパ文明揺籃の地である古代ギリシャの輝きは、神話の世界そのままに、人類史の栄光として今も憧憬の的であり続けている。 一方で現在のギリシャは、経済危機にあえぐバルカンの一小国であり、EUの劣等生だ。 オスマン帝国からの独立後、ギリシャ国民は、偉大すぎる過去に囚われると同時に、列強の思惑に翻弄されてきた。 この“辺境の地”の数奇な歴史を掘り起こすことで、彼の国の今が浮かび上がる。
累計40万部突破の人気シリーズ「名画で読み解く 欧州名家12の物語」シリーズの約4年ぶりの新刊にして、シリーズ最終巻。「ハプスブルク」「ブルボン」「ロマノフ」「イギリス」「プロイセン」に次ぐ物語の舞台は、イタリア。ローマ帝国崩壊後に統一王家が存在しなかったイタリアには、フィレンツェという芸術都市を統べた名家がありました。商家からの成り上がり一家が治めたルネサンス期の歴史を、華麗な絵画と共にお届け。
オカルトブームやホラー映画ブームと共鳴しつつ広がったホラー小説の歴史を、江戸川乱歩からモキュメンタリー人気に至るまで追う。
平家一門の栄光と破滅を描いた一大叙事詩である『平家物語』。その影響を強く受け、後醍醐天皇の倒幕運動や南北朝内乱を叙述した『太平記』。日本史を語る上で外すことのできない二代軍記物を比較・考察した、歴史と文学の関係を見つめ直すきっかけとなる一冊。 【目次】 第一章 『平家物語』とは何か 第一節 『平家物語』の成立 第二節 『平家物語』の構想 第三節 延慶本『平家物語』をめぐる諸問題 第二章 『太平記』とは何か 第一節 『太平記』の成立 第二節 『太平記』の構想 第三章 史料としての『平家物語』 第一節 源頼朝の挙兵 第二節 頼朝挙兵後の展開 第三節 源義経の伝説 第四章 『平家物語』の合戦描写を読み解く 第一節 一騎打ちはあったか 第二節 馳組戦から組み打ちへ 第三節 戦闘様式はなぜ変化したのか 第五章 史料としての『太平記』 第一節 鹿ヶ谷の陰謀の虚実 第二節 正中の変の虚実 第三節 以仁王と護良親王 第六章 『太平記』の合戦描写を読み解く 第一節 攻城戦の実態 第二節 「後詰」作戦 第三節 「野伏」の実像 終 章 『太平記』研究の可能性と課題
日本には、13種のサケ科魚類の生息が確認されていて、遺伝的にも生態的にも異なる4つの属に分類される。サケマスとひと口にいっても、多様な生物種なのだ。本書はその生活史をたどり、サケの生きる世界の豊かさを示す。そして、サケの保全に寄与したとされる放流の影響を探り、その意義を問う。サケマス研究の第一人者による、サケ愛に満ちた一冊である。
水辺に誘われる人たち 1985年・2003年・2005年・2023年、阪神タイガースがセ・リーグ優勝を果たすと、 歓喜したファンは戎橋、およびそのほとりから道頓堀川に飛び込んだ。 いわゆる道頓堀ダイブである。川への飛び込みは今や、納屋橋から堀川へ飛び込む中日ファン、 福博であい橋から那珂川へ飛び込むソフトバンクファン、ハロウィンや年末のカウントダウンでも見られるようになった。 なぜ、喜びのあまり我を忘れた人は、都市の川に飛び込むのか。 著者は、その理由を目抜き通り(御堂筋)に引き寄せられた人たちが 水辺(道頓堀)に向かう様から読み解いていく。近代から現代にかけて変容した都市と 人間の姿を浮かび上がらせたユニークな文化論! (以下、目次より) ・御堂筋パレードの原点は ・球団の夢、電鉄の夢 ・空席がめだつ甲子園 ・フーリガンのはけぐちは ・それでも、川にはとびこんだ ・道頓堀のマスコット ・カーネル・サンダース、ふたたび ・ダイビングは拡散して ・水面からはへだてられ ・道頓堀と御堂筋
物語はなぜ苦しいのか?「物語」が過剰に要求される現代社会で、「人生とはかくあるべきだ」という押しつけに抗う。 新進気鋭の美学者による「次世代の哲学」。 【推薦の声、続々!】 〇永井玲衣氏(哲学者・『水中の哲学者たち』『世界の適切な保存』) わたしたちは何のために哲学するのか。 それは、もっと世界に出会うため、もっと広々とした場所に行くため、もっと可能性にめまいをおぼえるためなのかもしれない。難波さんは、考えれば考えるほど、自由になっていくみたいだ。 〇田村正資氏(哲学者・『問いが世界をつくりだす』「あいまいな世界の愛し方」『群像』) ずっと、アイデンティンティを見つけなければと思っていた。 でも、アイデンティティという名の物語に囚われていただけだったのかもしれない。難波さんの本はそんな僕に「世界を見くびるな。そこから出てこい!」と語りかけてくれる。 【抜粋】 清涼飲料水の広告の少女はいつもドラマティックな青春を謳歌しているし、「推し」はファンの期待した筋書きどおりに振る舞うし、就活面接では挫折経験を「美談」として語らねばならない。 私は端的にこう思う。何かがおかしい、と。 人々はあまりにも強い物語の引力に引き寄せられて、もはや物語に支配されつつあるのではないか、と私は危惧し始めた。 だから、私はこれから、物語に対抗したいと思う。何かしらの物語が私たちの幸福を奪うのだとしたら、もはやそんな物語は廃棄されるべきだろう。私はよき物語を愛している。それゆえ、物語を批判したいと思う。愛するということは、支配されるわけでもなく、支配するわけでもなく、独特のバランスのなかで惹かれ合い、反発し合うことなのだと考えている。 第一部の「物語篇」では、物語化の持つ魔力と危うさを論じていく。第二部の「探究篇」では、物語の危険を避け、物語を相対化できるような思考を「遊び」を手がかりに探索していこう。その中で、改めて物語との向き合い方がみえてくるはずだ。 物語化批判、そして、遊びの哲学を始めよう。 【内容紹介】 〇 誤解を生む「自分語り」(第1章 物語批判の哲学) 〇「感情的だ!」という批判をする人こそ、実はもっとも「感情的」(同上) 〇 アイデンティティは服のように「着替えられる」(同上) 〇 人生を「攻略」しようとする人が陥る「視野狭窄」(第2章 ゲーム批判の哲学) 〇 なぜ人は「考察」と「陰謀論」にハマってしまうのか(第3章 パズル批判の哲学) 〇 真のギャンブラーが欲しいのは「お金」ではない(第4章 ギャンブル批判の哲学) 〇 残酷だけど創造的な「おもちゃ的生き方」(第5章 おもちゃ批判の哲学)
日本の現代ホラー小説の歴史を100の名作で辿る! 貞子を生み出しホラー界に激震を走らせた鈴木光司『リング』が刊行、日本ホラー小説大賞が創設、角川ホラー文庫が創刊ーー日本のホラー小説史上の重大事件が続々と発生した1990年代。出版界を覆ったこのホラー小説の高波は、令和のいま巻き起こるホラーブームまで繋がっています。その潮流を辿るため、本書では『リング』が刊行された1991年から2024年までに刊行された日本のホラー小説より、100冊を厳選しご案内。ホラー小説の世界へ深く誘う〈併読のススメ〉も加え、総計200作品以上のホラー小説をご紹介します。怪異と恐怖の文学ーーホラー小説の世界に、この本とともに呑み込まれましょう! *以下、本書目次より抜粋 はじめに 第1章 現代ホラー勃興 第2章 ベストセラーホラーの時代 第3章 世紀末ホラー黄金時代 第4章 多様化の時代 第5章 怪談文芸ムーブメント 第6章 混沌の一〇年代前半 第7章 現代ホラーの新しい波 第8章 令和のホラーブーム 評論 現代ホラーの新しい波 おわりに 現代ホラー年表
レジェンドが語る「音響監督」の黎明期から現代まで! 『鉄腕アトム』でアニメーションの世界に入り、1967年に『リボンの騎士』で音響監督デビュー。「音響監督」という言葉がなかった時代からアニメとともに歩み、音づくりの現場に立ち続ける著者が、いま音響監督の仕事を語る。本書を織りなす三つの〈音物語〉では「オーディション」や「アフレコ」、「声の芝居」といった役者たちが集う現場での考え方や、著者が関わった数々の名作の舞台裏、そして『鉄腕アトム』の頃の虫プロにまで遡る歴史が語られている。本書は、アニメを創り上げる数多くの人のつながりを記録する貴重なオーラルヒストリーであると同時に、アニメの音響の素晴らしさを次代に伝える一冊である。 *以下、本書目次より抜粋 まえがき アニメハック編集部 音物語1 音響監督が考えていること 音物語2 音響監督クロニクル 音物語3 音響監督はどう生まれたか あとがき 明田川進 明田川進フィルモグラフィー 原口正宏(リスト制作委員会)
強者が押しつける「正しさ」と暴力や分断がはびこる現代社会.そこで置き去りにされているのは,尊厳を踏みにじられた人々が紡ぐ〈小さな物語〉ーー恐ろしい怪物の物語として知られる『フランケンシュタイン』を,10のテーマを通して多様な作品群と縫い合わせ,読む者をケアの本質へと誘う.想像力を解き放つ文学論.
ペリー来航から王政復古までの過程は、志士や雄藩大名たちの「成功物語」として語られる。だが、こうした英雄史観は、明治政府が自らを正当化するために創り上げたものだ。 勤王をめぐる志士の分裂、戊辰戦争での幕府への協力、藩への強い思慕など、各地で様々な歴史があった。 本書は、周防大島、飯能、秋田大館、佐倉など明治維新を記憶に刻む地域を追い、時の政治や地域社会の影響を受け、書き替えられてきた物語の軌跡を描く。
東京芸術大学の前身,東京美術学校の波乱の歴史をたどりながら,明治維新以後の日本美術の,西洋との出会いと葛藤を描く.フェノロサ,岡倉天心,黒田清輝,横山大観…….国粋と国際派の勢力争いの中,戦争へと突き進む時代にもまれながら,日本美術はいかに模索され,戦後の近代美術へ展開していったのだろうか.
多民族・多宗教の大帝国はいかに栄え、そして滅びたか? 600年にわたる興亡を、小説家にして気鋭のトルコ文学者が描ききる! 渾身の「オスマン帝国史」が幕をあけるーー!! 「文明の発祥地であり東西南北の人とモノが目まぐるしく行きかう西ユーラシアにあって、しかもイスラーム教と正教、ユダヤ教、カトリック教を奉ずる異教徒同士が混住する東地中海と中東の只中に産声をあげ、従って富とともに常なる外寇と内訌(ルビ:ないこう)に晒(ルビ:さら)されるはずの地域に成立しながら、かほどの遐齢(ルビ:かれい)を見た国家は世に類を見ない。 本書は、現代から見れば、到底一つの政体が統合できるとは思われないこの世界を、実際に統治してみせたオスマン帝国の歴史を、最新の研究成果に拠りつつ辿る通史として編まれた(「はじめに」より)」 歴史のダイナミズムをとことん味わう、野心的な歴史大作! 【本書の構成】 はじめにーー崇高なる国家、あるいはオスマン世界 第一章 辺境の君侯 第二章 海峡をまたぐ王朝 第三章 大征服時代、世界帝国の誕生 第四章 壮麗王の帝国 第五章 成熟の帝国 第六章 改革の世紀 第七章 専制と革命 第八章 帝国の終焉 終章 オスマン語が語る世界